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森に続く小径を今日も往く。その森の奥深く、生命の泉があふれるところ。思い出すように、懐かしむように、足裏をしっかりと地につけて、歩む。
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操に再開する夢を見たあと

私は 車で 赤い橋を渡った

大きな波が 橋の上にまで 打ち上がり

いつもなら 眼下に見下ろすはずの川が すっかり海になっている

海面すれすれに 橋が架かっていて

真っ青な空と キラキラ光る真っ青な海に

赤い橋が 弓なりに架かっているさまは

おとぎの国のような かわいらしさだった

数え切れないほど多くのイルカが 橋の両側を きままに泳いでいる

ジャンプもしたりして

無言なのだけれど、楽しさが伝わる

この 海と空の青こそが 「みさお」なのだと思う

御青・・・霊妙な青さ 

潜象の色




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操という言葉が 貞操の意味で使われるようになったのは

いつごろからだろう

元来「みさお」とは 「御青」であり

霊妙な青さ のことだ

古くは

「風声」「風流」「気調」「美」「麗」「雅」「工」なども また

みさお と 訓(ヨ)んだのだ

俗を超えたところに在る「美」

「変わる」も「変わらない」も ないところに 在る「不変の美」



そんな「操」という名を持つ 昔の友人に

夢で 会った

懐かしくて、思わず 抱きしめた

細い 細い その胴体に 腕を回して

あまりの細さに 少し驚く

いったい あれから どれほどの月日が 経ったのだろう

ずっと「操」は「みさお」のままだった

その名のとおり 霊妙な青さが 

細い背中の 中心を貫く 背骨から 

光るように 伝わってきた

うれしくて 涙が あふれた




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何の木だろう?

名前は知らないが、あまり背の高くない木があって

硬く、濃い緑の葉っぱが どの枝にも みっしり茂っている

その葉っぱの表面には たくさんの黒い毛虫が

ウジャウジャと うごめき合って 這っている



一人の 上品な婦人が 木の枝を一本 手折り

私に 差し出した

「これ、食べられるのよ。あなた、知ってる?」

木の枝なんか 食べられるものか・・・と、心で 思ったが

知ってるとも 知らぬとも あいまいに映るよう 

私は 黙って 小さくうなずいた

「細かく 小口切りにして、お湯でアク抜きをしたら

炊飯器で お米といっしょに 炊けるのよ。試してごらんなさいな。」



私の左横には 男が立っている

私が 婦人と話しているのを 興味ありげに 聞いているふうだ

婦人の話を聞きながら 私の頭の中は

この男と どうやって別れようかと そればかりが浮かんでくる

枝入りご飯を 作るのなんて まっぴらゴメンだ

たとえ それが、思いのほか 美味しくできたとして

男が それを「うまい」と 褒めたとして

それが 何だというのだ?

私は 別れたいのだ



婦人が去ったあと、数十羽の小鳥が いっせいに 木に降り立ってきて

すごい勢いで 葉っぱの毛虫を ついばみ始めた

最初、スズメかと 思ったが

違う 

スズメぐらいの大きさの スズメではない小鳥だ

私は、その木の名前も、その小鳥の名前も知らない

食べられている毛虫の名前も 知らないのだ

そういう 知らないずくしの 中で、

感情を揺さぶられ、反応するだけの「私」というものに

おさらばしたいのだろう 

馴染みはあっても 面倒くさい 私の中の「要らない男」




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西風が 一日の終わりを告げるように

吹き始めた



それは

夏の終わりの 予感を 携えて

あたり一面の風景を やわらげてゆく



細く長く伸びた 庭のレモングラスが

しなるように いっせいに 揺れ

沈む夕日にむかって 大きく手をふる



暑い夏の 熱のむこうから

西風は 秋をつれてこようとしている

人知れず 確実に




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川が どこで生まれたか

わたしは 知らない



川が 流れる決心をしたときのことも

わたしは 知らない



水の恩恵を ただ ありがたく いただくばかりの人生というものに

そろそろ おかえしを したくなった



鮭が 次代の命を 産みつけるために

生まれ故郷の 川を 遡るように

みずからの皮膚が どれだけ傷もうと 省みもせず 遡るように



わたしという川が どこで生まれ 

どうやって 流れる決心をするに至ったかを

知りたくなった

次代の命を 生み落とす場所は 

始まりの場所以外には 考えられないから



湧き出る泉か

はたまた 天から降り注ぐ雨によるものか

わたしの出自を わたしは 知らない



どちらにせよ 始まりは 一滴の水

もしも 辿りつけたなら 

あらたな ひとしずくとして よみがえりたい




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