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森に続く小径を今日も往く。その森の奥深く、生命の泉があふれるところ。思い出すように、懐かしむように、足裏をしっかりと地につけて、歩む。
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何の木だろう?

名前は知らないが、あまり背の高くない木があって

硬く、濃い緑の葉っぱが どの枝にも みっしり茂っている

その葉っぱの表面には たくさんの黒い毛虫が

ウジャウジャと うごめき合って 這っている



一人の 上品な婦人が 木の枝を一本 手折り

私に 差し出した

「これ、食べられるのよ。あなた、知ってる?」

木の枝なんか 食べられるものか・・・と、心で 思ったが

知ってるとも 知らぬとも あいまいに映るよう 

私は 黙って 小さくうなずいた

「細かく 小口切りにして、お湯でアク抜きをしたら

炊飯器で お米といっしょに 炊けるのよ。試してごらんなさいな。」



私の左横には 男が立っている

私が 婦人と話しているのを 興味ありげに 聞いているふうだ

婦人の話を聞きながら 私の頭の中は

この男と どうやって別れようかと そればかりが浮かんでくる

枝入りご飯を 作るのなんて まっぴらゴメンだ

たとえ それが、思いのほか 美味しくできたとして

男が それを「うまい」と 褒めたとして

それが 何だというのだ?

私は 別れたいのだ



婦人が去ったあと、数十羽の小鳥が いっせいに 木に降り立ってきて

すごい勢いで 葉っぱの毛虫を ついばみ始めた

最初、スズメかと 思ったが

違う 

スズメぐらいの大きさの スズメではない小鳥だ

私は、その木の名前も、その小鳥の名前も知らない

食べられている毛虫の名前も 知らないのだ

そういう 知らないずくしの 中で、

感情を揺さぶられ、反応するだけの「私」というものに

おさらばしたいのだろう 

馴染みはあっても 面倒くさい 私の中の「要らない男」




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西風が 一日の終わりを告げるように

吹き始めた



それは

夏の終わりの 予感を 携えて

あたり一面の風景を やわらげてゆく



細く長く伸びた 庭のレモングラスが

しなるように いっせいに 揺れ

沈む夕日にむかって 大きく手をふる



暑い夏の 熱のむこうから

西風は 秋をつれてこようとしている

人知れず 確実に




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川が どこで生まれたか

わたしは 知らない



川が 流れる決心をしたときのことも

わたしは 知らない



水の恩恵を ただ ありがたく いただくばかりの人生というものに

そろそろ おかえしを したくなった



鮭が 次代の命を 産みつけるために

生まれ故郷の 川を 遡るように

みずからの皮膚が どれだけ傷もうと 省みもせず 遡るように



わたしという川が どこで生まれ 

どうやって 流れる決心をするに至ったかを

知りたくなった

次代の命を 生み落とす場所は 

始まりの場所以外には 考えられないから



湧き出る泉か

はたまた 天から降り注ぐ雨によるものか

わたしの出自を わたしは 知らない



どちらにせよ 始まりは 一滴の水

もしも 辿りつけたなら 

あらたな ひとしずくとして よみがえりたい




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中学生ぐらいの男の子が

「僕の背中、見て」

と、Tシャツを脱ぎながら クルリと 私に背を向けた

彼の背中には 昆虫の翅が 生えていた

うす緑色の 繊細で美しい 翅は

まだ 羽化したばかりのセミのように やわらかく 透き通っていた

「君、たしか・・・尾崎くんだよね」 と、私

「そうだよ。背中、見てくれた?」

「翅が 生えてるけど・・・」

「やっぱ、そうか・・・なんか 変な感じがしたんだ」




そんな夢を見た 翌日

ダイニングの 白い壁に 

どこから やってきたのだか セミの幼虫が とまっていた

こんなところで 大丈夫だろうか?

私の心配をよそに 幼虫は 羽化を始めた

もう 木に移したりとか、ヘタに手を出せる状態ではなくなっていて

私は、その羽化の 一部始終を ただ見守ることにした



やがて あらわれた 新しいセミの体は いかにもやわらかく

極薄の ガラスか氷細工より もっと繊細で ナイーブな 翅の美しさに

私は 見とれるばかりだった

薄緑だった体が しだいに 黒味を帯びて

どこから どう見ても立派なセミになったと そう思った途端

セミは 翅を動かして 飛んだ

私は急いで 窓を開け セミを戸外に 出してやった

外は もう 夜だった



あのセミは 尾崎くんだったのかな?



「僕たち少年は みんな セミに投影されているんだ

 言ってみれば、セミの羽化は 『永遠の少年』を象徴しているのさ」



私が勝手に「尾崎くん」と名づけた イメージ上のセミが

そんな風に 言ってた気もする

夢の中では



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月影が 波間で 揺れる

小舟が 一艘 波間に 揺れる

舟の上

男と女の 後姿が 見える

若い女が 男に身を寄せている

波音に混じって 女の声が 鈴のようにころがる

「なぜって?

ふふっ・・・知らないわ、理由なんて」

男は女に 何を問いかけたのだろう

男の声は 聞こえない



月はしだいに 傾き、やがて 水平線に隠れてゆく

砂浜を歩く 一人の女

朝日は もう 今にも顔を見せそうだ

その兆候は 充分すぎるほどに 砂浜に広がっている

女は 東を背に こちらに向かって歩いてくる

漆黒の髪、浅黒い肌、黒曜石の瞳

マリアじゃないか・・・

さっきの 小舟の女は マリアだったのか

男はどこへ消えた?



マリアは 独り言のように 呟く

「何故って?

おかしなことを 聞くのね

理由なんて あるわけないじゃない」

早朝の風に 透けるように薄い生地のスカートを ゆらめかせて

マリアは 砂浜を 歩く

裸足で



朝日は マリアの背中から 今 まさに 昇るところだ




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